ビジョンを具体的な形へと昇華させるのが職人の仕事だとすれば、その背景にある物語を紡ぐ役割を担うのは、また別の存在の仕事です。Outfit Narrativeの創設者であり、編集者でもあるシュザンは紳士服の歴史やアーカイブを情熱を持って探求し続ける、まさにその一人。
本インタビューでは、彼の世界観に触れながら、スタイルに対する考え方を紐解いていきます。
Outfit Narrativeでの活動は、時代を越えるメンズスタイルへの深い理解を感じます。スタイルのインスピレーションについて教えてください。
私が主に影響を受けているのは、強い個性を持ったスタイルを確立している人々です。それは歴史上の人物であったり、フィクションの登場人物であったり...日常の中で出会う、ごく身近な人々であることも。
若い頃は映画から多くの影響を受けていました。特定の登場人物が強く印象に残るのは、その佇まいや存在感、そして衣服の力が大きく関係していることに気づいたのです。古い映画に登場する男性たちは、服装によって際立つ、非常に男性的なエネルギーを放っています。デニムであれ、ミリタリーウェアであれ、スーツであれ、カッティングの違いが立ち居振る舞いにまで影響を与えているのがわかります。そこから、クラシックな服と現代の服との違いに興味を持つようになりました。
視覚的に整理されたコラージュ形式でコーディネートを提案されていますね。このアプローチに込めた考えを教えてください。
ある時、自分のクローゼットを整理し、手持ちの服でどれだけの組み合わせが可能なのか考え始めました。どのアイテムが相性よく、どれがそうでないかを見極めるためです。
最初は雑誌で見かけるようなコラージュを参考にしていましたが、無作為に服を並べるだけではしっくりこないことに気づきました。
実際に人が服を着た時と同じように、上から下へと順序立てて配置することで全体のバランスがより明確に伝わるのです。
この方法は非常に有効だと感じましたし、きっと他の人にも役立つと思い、この構成でコーディネート案をInstagramに投稿し始めました。
服装は気分にも影響します。選ぶアイテムの「質」は、どのような役割を果たしていると考えていますか?
まず大切なのは、それらが「本当に良いものを作ろう」と心を込めて向き合った人々によって生み出されている、という事実を知ることだと思います。そうした服を身に纏うことは、その技術や想い、作り手への敬意を表す行為であります。すべてが機械やAIに置き換えられつつある現代において、日常に違いをもたらすのは、人との関わりや心のこもった仕事です。ファストファッションの広がりとともに、こうした価値観が忘れられつつあるのは残念なことです。さらに言えば、重要なのは服そのものの質だけではありません。それが持つ背景や意味をも含めた「全体」が重要です。
クラシックな衣服はウールやデニム、レザーといった天然素材から作られることが多く、時間をかけて生産されます。数百年続く製法も多く、品質を損なわずに工程を早めることは不可能です。多くの工程が手作業で行われるため、価格が高くなるのも当然です。こうした技術は世代を超えて受け継がれ、家族経営の工房が地域の雇用を支えているケースも少なくありません。だからこそ、私たちはこれらの伝統が続いてほしいと願っています。
私にとって、まずスタイルがあり、次にフィット、そして最後に品質です。アイテム同士が調和していなければどれほど完璧なサイズでも装いは成立しません。逆に、組み合わせやフィットが適切でなければ質の良い服も進化を発揮できないのです。ただし、良いものは長く使えます。時間とともに身体に馴染み、生地には着用による表情や風合いが生まれ、それが唯一無二の個性になります。だからこそ、上質な服は「着こまれてこそ美しい」。愛着が生まれ、手入れや修復を重ねることで、結果的にその寿命も延びていくのです。
論理的な視点も編集方針に反映されていますね。今後、新たに取り上げていきたいテーマはありますか?
私はスタイルについて書いていますが、それは決して服だけに限られるものではありません。人は、あなたが何を着ていたかは忘れても、纏っていた香りや印象的な指輪や眼鏡は覚えているものです。
自信を持ち、心地よくいるためには、美しい装いだけでは足りません。身体と心のケアも、同じくらい大切です。
だから、トレーニング・体づくりについての考え方も共有しています。今後は香水やジュエリー、特に時計や指輪にもより焦点を当てていきたいですね。
また、旅行にもより多くの時間を割きたいと考えています。新しい出会いだけでなく、デザインや品質、細部への配慮が行き届いた食事や宿泊体験を読者と共有したい。
興味のあることは尽きませんが、1日は24時間しかありませんから、一歩ずつ進んでいくつもりです。